エンジンがかからないというのでお預かりしました。スターターを引いてみますと、重い。
焼き付きは圧縮が下がって軽くなる事が多いので、軸周りを疑いました。
大事になる前提で、分解の許可を取り、フライホイール側のシールを外すと、やっぱりベアリングが破損しています。
幸いクランクシャフトは生きていますが、それでも3万円超の修理です。
プロ機ともなれば、売価が高いので、やむなく修理となりました。
通常、ベアリングを圧入する為に、このようなベアリングドライバーという工具が存在します。
※純正工具も、これと似た構造(当て物)です
ところが、この手の工具は、少なからず玉っころを押してしまう可能性があり、ベアリングにダメージを与える可能性があります。
エンジンの心臓部であるベアリングには使用したくありません。
そこで、当店では工具を自作します。
このように、アウターのみを押せるように、内側を削った冶具を作ります。
ケースを閉じる時は、逆にインナーのみ押せる冶具を使います。
ガスケットを剥がした後、砥石で平坦を出します。当然、綺麗な砥石です。
当然ですが、クランクケースを、ヒートガンで熱して、「焼き嵌め」します。
マグネシウムのクランクケースは、とてもデリケートなので、無理にはめ込むと、すぐガタが出ます。
このように、ただ組み立てれば良いというものではなく、本来の耐久性をなるべく損ねない組み立て方が重要なのですが、やはり物に手を入れるという事は、若干の損失を伴いますので、新品と同じ状態に戻す事はできません。
中古の機械はあくまで中古、であります。オークションなどでご購入の際はご注意ください。